節を愛でる
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木材の節についてみなさんはどんな印象をお持ちでしょうか。
林業界では基本的に節がある木材は嫌われていて価値が低い存在です。
でも、なぜ価値が低いのでしょうか。
今回は、節について考えてみたいと思います。
節の種類
まず、節と一言で言ってもその中にも色々な種類があります。
節そのもの分類として、
生節:
枝が生きたまま幹に取り込まれた際にできたもの。取り込まれた時に枝は生きているため、幹の組織としっかりつながっており、木材としても強度も十分に保たれています。
via:北村商事
死節:
天候等何らかの理由で枯れた枝が幹に取り込まれた際にできたもの。枝が枯れてしまっているため、幹の組織とはつながっておらず、強度的にも弱くなってしまいます。
via:北村商事
腐れ節:
節に腐れが入っているもの。
via:院庄林業
抜け節:
死節が抜けて穴になっているもの。
via:木一筋ドットコム
流れ節:
節が斜めに切られ、細長くなっているもの。
via:e-house
葉節(はぶし):
節の中でもごく小さな節のこと。休眠芽が局部的に発達した小さな生節です。
via:北村商事
さらに、木材の中にある節の数や大きさによってランクが分かれていて、
節が少ない順に無節→上小節→小節→並となっています。
via:福岡市
節の中にもこれだけの種類があるということに、驚かれた方も多いのではないでしょうか。
それだけ日本人は「節」に対して敏感。さすが木の文化の国だなと感じます。
なぜ節がない木材が良いとされるのか
ところで、なぜこれほどまでに日本人が節に敏感なのか疑問に思いませんか。
木を加工する人たちにとっては、節は硬いので刃を傷めるなどの理由があったりしますが、木の桶をつくるから抜け節があっては困るといった特殊な状況を除けば、木で何かをつくる時に、節があることで機能的に大きな問題が起こることの方が少ないのではないかと思います。
そうすると、見た目の印象が良くないという理由が大きいのではないでしょうか。
値段が高い節がない木材は、どんな見た目の印象があるか想像してみると、
「上品」、「均質」、「落ち着く」、「すっきり」などでしょうか。
節がある木材は、
「自然」、「ワイルド」、「素朴」、「派手」みたいな印象があります。
確かに、一般的に「高級品」と呼ばれるものは無節の木材から連想される印象に近いような気もします。
でも、ジーンズはヒゲや色落ちが起きている「ワイルド」な印象のものの方が、色落ちしていない「均質」なジーンズより高かったりしますし、ジャニーズグループのアイドルは「すっきり」した「落ち着いた」雰囲気でライブをするより、「派手」で「ワイルド」な花火や紙吹雪が舞う中でのライブの方が絶対盛り上がるし、非日常感があって価値を感じる人が多いはず。
つまり、シチュエーションや性別、年代など様々な考え方によって、価値の高い低いは変わるように思います。
節ありと節なし、どちらも良さがある。
節がある木材でも良さを見出すことはできると思っています。
日本でも昔から節を愛でるような文化もあったりして、
茶室の世界では、木材の節の数は、昔から奇数が”吉”とされ、3・5・7・9の数が基本で、デザイン的に優れていると考えられていました。
また档(アテ)錆丸太と呼ばれるヒバの枝だらけの丸太は茶室や数奇屋建築などに欠かせない高級な木材とされています。
via:中基銘木
地域で木工ワークショップを開いてみると、
「この節が可愛いから、右隅に来るようにカットしたい」
「節の穴が空いている部分をカッティングボードの持ち手にしたい」
など節を生かした色々なアイデアが出ます。
繊細で上品な空間には、節なしの木材がマッチしていますし、
via:fritzhansen
コンクリートなどを使ったワイルドなかっこいい空間には節ありの木材があっています。
節があるから価値が低いというのは、ある特定の狭い世界の考え方であって、節の良さを生かしたものづくり・空間づくりをすることはできるということをこのような例から思い知らされます。
そう思うと、木材の節が自分の美意識を試しているのではないかとさえ感じます。
まず、一つ一つの節を愛でて、向き合いたいなと思いました。
飯南・縁の森 森脇