八神里山住宅内覧会・トークイベントレポート -その2-
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今回の記事は、『八神里山住宅内覧会・トークイベント–その1–』の続きになりますので、まだ読まれていない方は『その1』からぜひ読んでみて下さい。
今回の記事では、2023.3.4(土)に八神里山住宅のお披露目のイベントとして開催したトークイベントの中からアトリエ・ワンさんが語られた設計内容についてレポートします。
これまでの里山住宅について
(株)飯南・縁の森をプロデュースしている(株)トビムシでは、これまでもアトリエ・ワンさんに里山住宅の設計の依頼を行ってきました。
愛媛県内子町では、民家から暮らしの知恵を読み取り、それがどういった地域の資源を使って作られているのかをリサーチしました。
そのリサーチをもとに、「内子ならではの家」を提案していただきました。
福岡県八女市では、移住者のための「里山ながや・星野川」を設計いただきました。
地域と何の関わりもなかった移住者が、いきなり古民家を借りることは難しい状況があり、地域コミュニティーに馴染むためにも、地域で仕事を見つけるためにも手軽に借りられて住める賃貸住宅を建てました。
このように、各地域で必要とされている最適な建築を模索し、作り上げてきた流れの中で飯南町の「八神里山住宅」は出来上がったのです。
板倉構法について
「里山ながや・星野川」さらに、「八神里山住宅」でも使った、特徴的な工法である板倉構法について少しご説明します。
板倉構法は昔から日本にあった建て方で、神社や穀物倉庫なんかに使われていました。
それを現代の建築基準法にも合うように改良を重ねて、現在では日本各地で板倉構法の建築が建てられるようになっています。
この構法の最大の特徴は、木材をふんだんに使っていること。
普通の住宅の1.5倍〜2倍もの木材を使います。ですので、木本来が持っている断熱性、調湿性、香りなどを充分に感じてもらえる構法になっています。
さらに、それだけ地域の木材を使うということは、お金が地域に落ちることになるわけで、地域外から資材を持ってくるより、環境問題的にも地域内の経済循環的にもとても良い構法なのです。
周辺リサーチ
アトリエ・ワンさんが飯南町の建物を見て回った時に、印象に残ったのが志都の里のクラインガルデンだったそうです。
広い軒下空間(ロッジア空間)があり、そこでは、目の前の畑で採れた野菜を料理して食事をとったり、ちょっとした外作業を行ったり暮らしを豊かにするふるまいが外に溢れてくるようなスペースになっており、今回の住宅で大いに参考にされました。
その他にも、緑の森林を背景にしたこの地域独特の赤い石州瓦の屋根が微妙に色を変えながら建っている様子が、町を明るくし、飯南らしい風景を作り出していると感じられたようです。
設計内容
裏手の明眼寺の建ち方にならった方向に住宅の正面を向け、住宅間も適度に距離をとる事で、室内に日光が入り明るくなるように、何度も配置の検討を行なったようです。
また、外部空間をしっかりとることで、家庭菜園や、テーブルや椅子を外に持ち出して食事をとったりすることができるスペースもあります。
屋根、外壁は、石州瓦を参照したベンガラ色に着色されており、飯南町の伝統を踏襲しながらも、移住者の新たな住まいとしての象徴性を表現する、凛とした雰囲気をまとっています。
キッチンも町内木工所に製作いただいた特注家具です。
リビングルームに大きな吹き抜けを作り、大きな窓から太陽光がいっぱいに降り注ぎます。
夏など日差しがきつい時は障子を閉めることで、柔らかな光が室内にひろがります。
2階には個室が3部屋あり、吹き抜けを介して1階や隣の部屋の様子を伺うことができ、つながりを感じることができます。
アトリエ・ワンさんのお話を聞いて、この住宅はまだ完成していないのではないかと感じました。
家の周りの空間に、樹木や花々を植えたり、野菜を育てたりして、庭に自由に手を加えていくことでようやくアトリエ・ワンさんが思い描いている住宅が完成するのだと思います。
移住者の夫婦や家族が住まわれて、子供たちや犬が庭を自由に走り回っている。
そんな暮らしが実現されるといいなと思いました。
この記事の作成日、2023.7.10時点では、まだ空きがあるようです。
ご興味がある方は、飯南町役場のホームページもぜひご覧になってみてください。
飯南・縁の森 森脇