八神里山住宅内覧会・トークイベントレポート -その1-
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完成した八神里山住宅のお披露目のイベントとして、2023.3.4(土)に内覧会とトークイベントを開催しました。
東京から建築設計事務所アトリエ・ワンのお二人(玉井さん、野尻さん)が来てくださり、設計内容や設計に込めた思いなどを語っていただきました。
2021年の4月から設計が始まり、2年という長い時間をかけてようやく完成した住宅です。これまで飯南町では建てたことがない建築を、飯南町、工務店、設計者、縁の森が協力して、なんとか完成までたどり着くことができました。
そんな内覧会には総勢60名ほどの方が見に来てくださり、トークイベントにも25名ほどの方が参加してくださり、多くの方に注目していただける住宅を建てることができたとまずはほっとしました。
今回の記事では、当日の様子をレポートしようと思います。
内覧会
まずは実際の住宅を体感してもらおうと、設計士のお二人の案内のもと住宅の見学を行いました。
各部屋の説明や設計するときにどういったことを考えていたのかをお話しいただきました。
例えば、このリビングの吹き抜け空間。この空間は住宅の中でも特徴的な場所です。木が床・壁・天井など全面に見えていると重たい雰囲気になってしまうことがあるのですが、ここでは吹き抜けにして、大きな窓を設けることで、光が燦々と降り注ぎ、窓を通して外に視線が抜けるような開放感を作り出しています。
内覧会に参加してくださった方も
「木のいい香りがする〜」「住みたいな!」といった感想を言ってくださっていました。
トークイベント
トークイベントでは、建設に至った経緯、設計内容についてご説明し、その後、トビムシの竹本さんも交えてディスカッションを行いました。
ここでは、それぞれの説明内容をかいつまんで書いてみようと思います。
建設に至った経緯について
かれこれ3年前、2020年にトビムシ、アトリエ・ワンそして東京工業大学院塚本由晴研究室とが合同で行った研究を「飯南町における建築を介した林業6次産業化の提案」というタイトルで提案書類にまとめました。
その研究は、飯南町の風景を形作っている建物がいつの時代にどのような暮らし・生業によってできてきたのかを調べたものです。
今回の記事では詳しい内容には触れませんが概要を説明すると、かつての暮らしは森林の資源が活用され、里での暮らし・生業に森林は欠かせない存在でした。そんな時代に建てられた建築は、裏山の木材や茅など身近な素材で作られたものでした。
ですが、自動車が発達し、国道などの太い幹線道路ができることで、町外から暮らし・生業に必要な資源は調達されるようになり、徐々に森林は見捨てられた存在になってしまい、里での暮らし・生業との関係性が薄くなっていきました。
それを再びどう森林と結び直すのかということを建築を介して提案したものです。
具体的には、サンプルとして5つのタイプの建築をピックアップし、設計提案を行なっています。
この提案書類は持って工務店などあらゆる場所に話をしに行き、共感して一緒に取り組んでいる事業者を探していました。
そんな中、飯南町役場が「移住者を呼び込む新しいデザインの住宅が欲しい」という要望をおっしゃってくださり、実際の建設プロジェクトに繋がっていきました。
そんなプロジェクトの大きな方針として以下の4つが挙げられました。
それぞれの方針にはこんな思いが込められています。
1.町産材がふんだんに使った住宅
まず町産スギ・ヒノキをふんだんに使うことで、木の家に住む魅力や心地良さを体感してもらいたいと思いました。
2.町内工務店だからこそ建てられる住宅
今回の住宅は「板倉構法」という建て方なのですが、一般的な大手ハウスメーカーなどでは建てられることが少なく、木に関する知識がある大工さんでなければ建てることが難しい建築です。
また、気候や風土にあった住宅を建てられるということも町内工務店だからこそできることなのだと考えています。
雪が多く降ることや湿度が高いことなど町内で建築を建てる時に特に配慮しなければいけないことを、町内で長い間建築をつくってきたからこそ熟知されています。
そのことが時に設計者と意見がぶつかってしまう原因になっていましたが、お互いにいい住宅にしたいという思いがあってこそで、デザインが更にいい方向に進むきっかけにもなっていたと感じていました。
3.移住者が住みたくなる飯南らしいデザインの住宅
建築が持っている魅力の一つに、中に入った瞬間に「この家いいな」「住んでみたいな」など、直感的に良さを感じられることがあると思います。
前に書いた1、2にも関連することですが、移住検討者が飯南町に来たい、住んでみたいと思える飯南らしさが感じられるようなデザインが必要だろうと判断しました。
4.モデルハウスとしての住宅
我々は木の魅力を発信しようとあれこれ頑張っているわけですが、実際、地元の木を使ってどんな空間ができるのかわからないという声をよく聞いていました。
だから、この住宅をモデルハウスとして位置付けて、町内工務店に頼むとこういった住宅が作れるんだ、木の家ってこんな感じなんだということ体感してもらいたいなと考えました。
以上のようなことも考慮していただいて、設計していただいたのですが、設計内容まで書いていると長くなってしまうので、今回はここまでにしたいと思います。
次回の記事では、設計者であるアトリエ・ワンが設計に込めた思いなどを書かせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。その2もお楽しみに。
飯南・縁の森 森脇